雨夜の密会
「和臣、さん?ホコリが……」
私はシャツに手を伸ばしホコリを取ろうとした。
“バシッ”
…………えっ?
和臣さんが私の手を払い除けた。
「和臣、さん?」
和臣さんを見上げる。
いつものように無表情で私を見下ろしている和臣さん。
何も言わない。
ただ、さっきと同じように氷のように冷たい目で私を見ているだけ。
「…………出掛けて来る」
和臣さんはそう言って、私の横を通り過ぎ玄関まで行く。
私も和臣さんの後をついて玄関に行き、靴を履いてる和臣さんの背中を見つめていた。
「和臣さん、どこに……」
「キミには関係ないだろ?」
振り向く事なく、玄関を出て行った和臣さん。
“バタン”と玄関が閉まる音だけが虚しく響いていた。