雨夜の密会
鳴海さんが居ない今、何となく部屋に入ったらいけない気がして、私はずっと玄関にしゃがんでいた。
段ボールから出そうになる仔猫を阻止しながら、鳴海さんの帰りを待つ。
とれくらい時間が経ったのかな。
玄関の鍵を開ける音がして、ドアが開いた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
“ただいま”
“おかえりなさい”
なんて会話をしたのは、いつ振りだろう。
そんな簡単な会話が出来た事に嬉しくて仕方がない。
「遅くなってゴメンね」
「ううん。猫を見ていたら、あっという間に時間が経っちゃった」
鳴海さんは両手に沢山の荷物を抱えていた。
それを玄関に置く。
「俺、猫のシャンプーして来るから、部屋に入って適当に座ってて?」
「うん……」
鳴海さんは靴を脱ぐと、段ボールごとお風呂場に入ってしまった。
私は鳴海さんに言われたように部屋に入り、ラグの上にペタンと座った。