雨夜の密会



丘の上にある墓地。


そこに葵は眠っている。


空に近くて、街の風景を一望できる場所。



「葵、来たよ……」



俺は葵の墓の前でそう言った。


葵の大好きだった向日葵の花を墓石の前に置く。


それから葵の大好きだったミルクティー。



「葵、何から話そうか?」



俺はその場にしゃがんで、白梅の香りがする線香に火をつけた。



「そうそう、俺さぁ、猫を飼い始めたんだよ。しかも4匹も。すげーだろ?」



スーツのポケットからスマホを取り出して、写真が入っているファイルを開き、それを葵の墓に見せた。



「ほら、可愛いだろ?名前は、母猫が春で茶トラが夏、鯖トラが秋、白が冬」



俺はスマホの画面をスワイプさせていく。


その時。



「蓮くん?」



後ろの方で俺の名前を呼ぶ声がして、その場に立ち上がり振り向いた。




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