雨夜の密会




「お兄さん、プロのカメラマン?」


「えっ?いや……」


「違うの?」


「うん……。プロを目指してるみたいな感じかなぁ……」


「へぇ」



女の子はさっきまでベンチに座っていた時とは違って無邪気に俺に話しかけてくる。



「ねぇ、写真撮って?」


「えっ?」


「お願い!」



女の子は俺の手を握って、歩き出した。


冷たい手だな。


でも女の子の冷たい手とは逆に俺の体は凄く熱かった。


女の子と手を繋ぐ事なんて初めてではなかったのに、初めて手を繋いだ時のように胸がドキドキと煩い。


女の子が俺の手を離し、さっきまで座っていたベンチに座った。



「撮って?」


「えっ?あ、うん……」



カメラのファインダーを覗く。


笑顔だけど、どことなく悲しい目をした女の子。


“カシャ”


シャッターを押す。



「もう1枚!」



そう言った女の子は次はピースサインをした。


“カシャ”


再びシャッターを押す。



「ありがとう!」



女の子はそう言って笑顔を見せた。




< 81 / 134 >

この作品をシェア

pagetop