雨夜の密会
「だから大人をからかうんじゃないよ」
「ねぇ、いるの?」
「いないよ」
「そうなんだ。蓮ってカッコイイから彼女いるのかと思っちゃった」
葵ちゃんはそう言ってクスリと笑う。
彼女がいたら部屋に女の子なんか上げないだろ。
ヤカンからお湯が沸いた音が聞こえ、火を止めてマグカップにお湯を入れる。
透明だったお湯が琥珀色に変わっていく。
マグカップの中でティーパックを揺らし、それを取り出すと、マグカップを持ってリビングに行った。
「どうぞ?」
「ありがとう!」
真夏のクソ暑い中、熱い飲み物を出した事に少し後悔していたけど、葵ちゃんはマグカップを持つと美味しそうに紅茶を飲んでいく。
「はい、これ。この前の写真」
「ありがとう!」
封筒に入れた2枚の写真。
それを封筒ごと葵ちゃんに差し出した。
「見ていい?」
「うん」
俺は葵ちゃんと少し距離を置いてソファに座る。
封筒から写真を取り出して、俺が撮った写真を真剣な表情で見ていた。
それをチラッと見る。
胸がドクっと高鳴る。
葵ちゃんは感想をいうわけでもなく、再び封筒に写真を入れると、それをカバンにしまった。