Snow Drop Trigger
「桃瀬」

「馬鹿馬鹿馬鹿ぁ‼
康介の馬…………って、どうしたの悠太(ゆうた)?」

「叩き過ぎ」

「…………あ」


ナゲットをソース無しで口へと運ぶ金髪の男子高校生もとい悠太。

彼の言葉でようやく我に帰った桃瀬は、爽やかな笑みを浮かべたままテーブルに伏せている康介を見た。

康介を二度見してから、悠太に向き直って桃瀬は舌を出した。


「て、てへぺろっ☆」

「『てへぺろっ☆』じゃねーよ。
俺を殺す気か、桃瀬」


舌を出して頭にグーをぶつける動作をした桃瀬。

すかさず、死の間際まで追いやられていた筈の康介が突っ込みを入れる。

そんな二人のやり取りを無表情で見た後、悠太はテーブルに置いてあるポテトを一つ口へ運んだ。

もぐもぐと口を動かしてポテトを次から次へと口に運ぶ悠太の異常な食欲に、彼の正面に座っている女子高校生がようやく声をかけた。


「ねぇ、悠太」


前髪を所謂パッツンにしていて、黒い綺麗な髪を肩まで伸ばしている彼女は、唯一制服を一応はちゃんとした形で着用している。

ただ、スカートが短い事とブラウスの裾が出ている事を除いてだが。

悠太が手を伸ばしてポテトをつまむ前に彼女は、ポテトの前に手を被せてガードするような姿勢を取った。


「悠太。ポテト、食べ過ぎてない?」

「亜衣(あい)、食べてない」

「確かに、私は食べてないけど……」

「康介、桃瀬と漫才中」


悠太がスッと指差す先の二人は、その発言にすかさず突っ込みを入れる。


「漫才じゃねぇよ、悠太」

「そうだよぉー! 漫才なんてもんじゃないもんっ!」


ほぼ同時に反論をした彼等だが、外野から見れば仲睦まじい光景だ。

だがしかし、悠太はそれが漫才だろうがなかろうが特に問題無いらしい。

無表情で亜衣の指と指の隙間に指を入れ込み、ポテトをまたつまもうとした。

指と指の隙間に指を入れられるという突然の行動に大層驚いた亜衣は、顔を真っ赤にして手を勢いよく引っ込めた。


「ゆっ、悠太!」

「誰も食べない。だから、問題無い」

「そ、その事じゃなくてっ……!」

「亜衣」


ポテトをつまもうと手を伸ばした悠太はその発言に対して疑問を持ったようで
、真正面に居る亜衣に顔を近付けた。

亜衣は顔をさらに真っ赤にして、慌てて悠太から離れて照れている事を隠すように言った。


「わわ、私は! 悠太が食べ過ぎてたから止めただけだから!」

「あっれー、亜衣ぃ?
顔を真っ赤にしてどぉしたのぉー?」


亜衣の隣でニヤニヤしてる桃瀬と、それを見て爽やかに笑う康介。

慌てている亜衣達に御構い無しで再度ポテトをつまむ悠太に、顔を真っ赤にしているのを頑張って隠している亜衣。


「ゆっ、悠太はポテト食べ過ぎ!」

「シナシナのポテト、食べない。
これは、亜衣と桃瀬と康介の分」
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