あいしてる
「なんで怒るわけ?……あーあ、言うんじゃなかった」
口をとがらせて窓の外を流れていく景色を眺めていた。
はじめから怒られることはわかってた。
だから内緒にしておいたのに。
「いいよ。たまにはおごってやる」
オープンしたての焼き肉屋でお腹いっぱい美味しいお肉を食べたうえ、ご馳走になってしまったものだから、あまりの気分の良さについつい口にしてしまった。
「もしかしたら彼氏、できるかも」
って。
さっきから黙ったままの親友は、スピードを落とすと徐々に車を左に寄せていく。
「な、なに?」
自宅まであと100メートルほどの場所で完全に車を止めると、
「なに?じゃねぇよ…」
低い声で呟いた。
今までに聞いたことのない声に、心臓の動きが速くなる。
「ちょっとは…かしこくなれよ。頭つかえよ」
悲しげなその横顔を見て、胸がチクンと痛んだ。