あいしてる
「バカか。……ほんっとにおまえってヤツは」
ハンドルを握りしめたまま大きなため息をついた親友が、チラッとこっちを見てまたため息をついた。
あたしは助手席でカチカチと単調なリズムを繰り返すウインカーの音を聞きながら、道路脇の街灯に照らされた親友の横顔を眺めていた。
“男がいなくちゃ生きていけない”
自分はそんなタイプではないと思ってた。
けど、恋人と別れてすぐに新たな男に胸をときめかせたあたしは、親友の言うように、
「どうしようもないヤツ」
なのかもしれない。
「だって、いい男がころがってたんだもん。もしかしたらこれが、運命の出会いってやつかも?」
そう言ったあたしの頭を小突くと、
「いい加減にしろよ」
信号が青になったと同時にハンドルを左にきった。