君が想い出になる前に




「じゃあ葉月は、
    あの松本 惣右介の隣の席な!」




「え!?」

(あ、あの子松本くんっていうんだ。)



みんなの視線を気にしないフリをして
一番後ろまで歩いていると
いきなり目の前にさっきのヤンキーが立っていた。



(ーーひ!?)



「俺の席、そこだから通して」







そう言って彼が指さしたのは、
わたしの前の席だった。




内心かなりショックだったのは
言うまでもない(笑)






(隣の席の娘、可哀想だなぁ。。)
チラッと彼の隣を見ると、
長い黒髪を耳にかけた瞬間に見えた横顔だけで
彼女が誰だか分かってしまった。



(あ、なんか
 雰囲気が似てるかもーー)






「じゃあ委員長〜
   ショートホームルームはじめよか。」




森先生の言葉に、
彼女が静かに立って教壇へ向かった。





(あの娘が、蒼井さんかぁー
 自分で自分に似てるって思ったの初めて。)





座ったせいか、少し落ち着いて
ふぅーっと溜め息をつくと





「改めてよろしくね、葉月さん」


隣の席の松本くんだ。


「あ、さっきはどうも。
   同じクラスだったんだね。
   よろしくね、松本くん。」



「惣右介でいいよ!
    みんなそう呼ぶし。」


「あ、じゃあ、惣右介、。
    わたしも麻央でいいよ」



「まじ!?やったー!
   よろしくね、麻央」





そう言うと惣右介は
まるで子どもみたいに、いたずらっぽく笑ったーー
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