抱きしめたい
「そういえば、凛の彼氏初めて見た。」


「そおだね。カッコいいっしょ。」


「おぉ。俺には負けるけどね。」


「ハハハ…バカじゃん。」


「バカって・・・つうかさ、あそこにいるの凛の彼氏じゃねぇ?」


その言葉に釣られて輝の指差す方を見ると、確かにアパートの前には真吾が座っていた。


「何やってんだろ?」


わたしは真吾の居る所まで走って行った。

わたしに気付いた真吾は立ち上がり、わたしが行き着くのを待っている。


「真吾、どぉしたの?」


話しかけるわたしに


「どこ行ってた?」


と質問を投げ掛ける。

その声のトーンはいつもより低く、わたしを見下ろす目はとても冷たかった。


「あ、近くのコンビニ。朝食べる物無かったから…」


真吾のあまりにも冷たい視線が突き刺さり、やましい事も無いのに目を合わす事が出来なかった。





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