威鶴のmemory

この母、竹原香織の好物は、『可愛いもの』全般。

可愛いといっても、とりあえず基本的に女の子は大体『可愛い』と認識し、場合によっては男ですら『可愛い』と言い始める。




そう、その例のお父さんですら『可愛い』らしい……この母からすれば。



つまり私が今日来た理由は、逃げるだろう母をおびき寄せる……まぁつまりは、本当に『エサ』だったのだ。

確かに私も一緒に行く理由は聞いていなかったけれど……というか、約束そのものをしていたから別に疑問に思ってはいなかったのだけれど……。



「すねたか?」

「すねたんじゃない?」

「あら、すねても可愛いわ」



……ムカつく。

エサって。

何、エサって。

確かに、紹介と言われても、まだ結婚とかをするわけでもないし、婚約すらもしてないから……紹介とも言い難いけど。



……エサか。



「依鶴」

「気にしてない。ぜんぜん、これっぽっちも、ほんの1ミリすらも気にしてない」

「──の、逆だろ」
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