W-アイ ~君が一番に見たいもの~ 【完】
「今日なにか食べたいものある?退院祝いだし、なにか食べにいっちゃおうか。お父さん、今晩早く帰れるかしら」
お袋は、両手いっぱいの荷物を今にも振り回しそうな勢いで、飛び跳ねるように俺の横を歩いている。
ったく、何がそんなに目出てえんだか。
「別に……。腹がはりゃなんでもかまわねえよ」
そういつものように答える俺は、気が付くと、お袋の手から荷物を奪っていた。
「あら、どういう風の吹き回し?」
「うっせえんだよ」
「やだ!奇跡みたいね」
そう言って、嬉しそうにほほ笑むお袋の顔を、その時、自分がまじまじと見つめていたことの方が、俺的には奇跡に思えて。
――つうか、奇跡って……。
やっぱ。
それはとんでもなく、無性に恥ずかしかった――。