短編集~甘い恋~
「優奈の中学と、俺の中学…K中の柔道部の練習試合があったときだ。
その時は、K中で試合が行われた。優奈は、その練習試合で…体格がすげぇデカイ剛田<ゴウダ>に、負けている」

そう、あたしは一度だけ、負けたことがある。
体格がとても大きな女子、剛田さんに…。

「だけど、優奈は。負けたのは自分の練習不足だ。と言って、決して体格のことを口にしていない。言い訳をするのは、弱い証拠だ」

強く、歩はそう言い放った。

「ぐッ…」

顔は見えないが、渋谷くんの今の発した声からして、悔しそうな顔をしているのだろう。

「優奈を泣かしたんだ。俺、お前の事もう許さねぇから。
もう、かまうなよ。
…優奈、行くぞ」

「へ?わっ…」

歩は、ドスのきいた声でそう言うと、

あたしの腕を引き、教室を出た。

教室からは、渋谷くんを責める声と、
歩への歓声が響き渡った。

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