ため息と明日
まさか自分がこんなにも、動揺するとは思わなかった。
別れた男のことなんて、ずっと忘れていたはずなのに…
どうして今日、聞いてしまったのだろう
そして、忘れていたはずの日を、思い出したのは、偶然か
はたまた必然か
今日は、智樹の誕生日。
なんで思い出すかな、ほんとバカ。
「…ねぇ、わざと?」
敢えて今日、その話を私にしたのは
「どうかな」
目の前で綺麗に微笑むマスターが、今だけちょっと憎い。
テーブルに肘をついて、左手を額に当てた。目を伏せて、何も考えないように。
「智くん、変わったと思う」
マスターこれ以上は勘弁してほしい。
「特別な日に、会いたかったんだろうね」
知らない、そんなの。
そして、最後の切り札と言わんばかりに私に向かってあるカードを差し出した。
「アヤキちゃんがここに来たら、渡して欲しいって言われたから。受け取ってあげて?」
名刺の裏、頼りない力でカードを持った。
そこに記された言葉を見て、
もう隠せない感情が表れていたこと
マスターだけが、気付いたのだ。