執事ちゃんの恋
第24話



第24話



「コウさま……?」


 戸惑うヒヨリとヒナタに向って、瞳をキラキラとさせ、手を握り締めているコウは、嬉々としている。
 あっけにとられている二人に、コウは嬉しそうにはしゃいだ。


「そうよ! なんで今まで気がつかなかったのかしら」

「えっと……コウ、さま?」

「今までは今までよ。慣習なんて私が取り壊してみせるわ」


 フフフと不気味に笑うコウを見て、ヒヨリとヒナタは顔を見合わせて小声で内緒話をする。


「ちょっとヒナタ。なんかまずくない?」

「コウさま、なにかひらめいちゃったみたいだな……」

「そんな悠長なこと言ってる場合? ヒナタに恋しちゃっているらしいのよ」


 コソコソとヒナタの耳元で囁くと、数秒置いたあとヒナタは青ざめて「マジ?」とヒヨリを見つめた。
 ヒヨリがコクリと頷くと、ヒナタは救いを求めた。


「ってか、ヒナタが好きっつったって偽ヒナタを好きになったってことだろ?」
「……うっ」

「お前、どんなヒナタ演じてたんだよ。なんか色々この数ヶ月間探っていたけど、なんかめちゃくちゃアイドル化してたぜ? 偽ヒナタ」

「ア、アイドル!?」


 一体どうしてそうなったとヒヨリが理解に苦しんでいると、ヒナタは盛大にため息をついた。


「ヒヨリ、どんな執事してたんだよ」

「ど、どんなって……」


 ジトッとヒヨリを睨むヒナタに、ヒヨリはたじろぐ。

決して目立たないよう、それでもヒナタの偽者らしく、ヒナタならこの場面どんな行動にでるか、ヒナタならどんなことを言うか。
 そんなことばかりを考え、この数ヶ月間コウの執事、霧島ヒナタとしてやってきた。
 
 アイドル化しているといわれても困ってしまう。





< 112 / 203 >

この作品をシェア

pagetop