執事ちゃんの恋





「なるほどね。突然ヒナタが現れたのを見たときには、内心びっくりしたよ」

「びっくりなんてもんじゃなかったわよ! っていうか、わかっていたならパーティーが始まる前に私に連絡をとってくれればよかったのに」

「まぁ、確かにね」

「確かにね、じゃないわよ。そうすればあんな肝が冷えるようなことにならずに済んだのに」

「悪かったて、ヒヨリ」


 頬を膨らまして涙目でヒナタを見つめるヒヨリを見て、健は眉をピクリと動かした。


「ヒヨリ、肝が冷えるって? なにがあったの?」

「えっと……」


 戸惑いながら瞳を揺らすヒヨリに、ますます何かを感じとった健はヒヨリを抱き寄せた。
 突然抱きしめられたヒヨリとしては、質問の答えの件もだが、健の熱を直に感じて慌てた。


「そういえば私が兄さんに呼ばれたあと、美紗子となにやら話していたようだけど」

「っ!」


 下を俯くヒヨリに、健は怪訝な表情を浮かべ眉を寄せた。
 ますます問いただそうとする健にストップをかけたのは、ヒナタだった。


「彼女は、健先生のなんですか?」

「ヒナタ?」


 攻撃的な声色に驚いた表情を浮かべた健に、ヒナタは容赦なく言葉を突きつけた。


「彼女……村岡美紗子さんは、健先生の大学の後輩でもあり、元フィアンセということで間違いないですよね?」

「……」

「健先生」


 答えを早くと促すヒナタに、健は神妙な表情で頷いた。

 それを見ていたヒヨリは、やっぱり本当のことだったのだと改めて確信して落ち込んだ。
 ヒヨリの気持ちを悟ったヒナタは、健に厳しい視線を送る。






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