執事ちゃんの恋







「霧島にはいい使用人頭がいるね」

「はい、ヨネは最高の使用人頭です」


 本当はそんな言葉だけじゃ表せないほどに、霧島のため、ヒヨリのために翻弄してくれていることはわかっている。

 ヨネもいい歳だ。
 そろそろ引退して、ゆっくりと余生を楽しんでほしい。
 そんなふうに、ヨネへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになっていたが、健の言葉を聞いて固まった。


「自分がヒヨリの子供の世話をしたいから、私に早いところ頑張ってほしいといわれてしまったけどね」

「はぁ!?」

 
 使用人とお嬢様との絆をより感じて、感動で終わろうとしていたのに、どうやらそれでは終わらないらしい。

 さすがはヨネというべきか、やっぱりヨネだ、抜かりないと言うべきか。
 頭を抱え込んでいるヒヨリに、健は「だからさ」と耳元で囁いたあと、ヒヨリをベッドに押し倒した。

 ポスンとふかふかのベッドが揺れる。
 一瞬気を抜いていたヒヨリは、健に覆いかぶされて我に返った。


「え!? た、健せんせ?」

「ヨネの期待に応えなくちゃね、ヒヨリ」

「ちょ、ちょっと待って!」

「待てないって、さっき言ったこと。覚えているかい?」

「っ!」

「ま て な い よ」

「た、健……せんせ」


 健の長くキレイな指が、ヒヨリの頬を辿る。

 くすぐったくて、だけどゾクっと震えがくるほどに淫らな感覚がヒヨリを襲う。
 熱に侵されてしまったように、ヒヨリは動くことができなかった。


「ま た な い よ」






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