執事ちゃんの恋




「まだパーティーは序盤ですよ。あまり根を詰めると後に響きます」

「だけど、ヒナタ。私はホストなのに……」

「それでも、です」


 強く言い切るヒヨリに、やっと根負けしたコウはコクリと小さく頷いた。

 ヒヨリはやっと納得したコウを見て、安堵のため息をしたあと、ゆっくりとコウの手をとり、近くにあった椅子に腰かけさせた。


「……コウ様、失礼」

「ヒナタ!?」


 椅子に腰掛けたコウの前に跪く。

 驚くコウの制止の声も聞かず、ヒヨリはコウの右足を優しく掴み、パンプスを脱がした。


「……やっぱり」


 ヒヨリは大きくため息を零したあと、コウを見上げた。

 コウはヒヨリの問い詰める視線を感じてか、バツの悪い表情を浮かべ、そっぽを向く。


「コウ様」


 少しだけ怒った口調で名前を呼ぶヒヨリに、コウは唇を尖らせた。


「だいぶ前から辛かったでしょう?」

「……」

「靴づれを起して赤くなってしまっている」


 コウのかかとは、真っ赤に腫れ皮がむけてしまっていた。

 傷口を見ても、相当辛かったことだろう。


 ヒヨリはその傷を見て、表情を歪めた。

 その視線を感じながらコウは視線を下ろし、跪くヒヨリを見つめる。


「だって、今日のパーティーの主役が泣き言なんて言っていられないでしょう?」

「……コウ様」


 ヒヨリは小さく息を吐いた。




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