執事ちゃんの恋
第21話



 第21話


「ヒヨリか?」

「……そうですよ?」


 ヒヨリは美紗子に促されて健が待つ部屋へと行くと、ドレスアップした自分の姿を見て健は目を大きく見開いた。

 なんともいえぬ沈黙が続き、ヒヨリも所在なさげだ。


 そんな二人を見て、クスクスと笑いだしたのは美紗子だった。


「健さん。どうです? ガラリとイメージチェンジできたんじゃないかしら?」

「……ああ。どうみてもさっきまで男装をしていた子とは思えない」

「じゃあ、大成功ってことでいいかしら?」

「ああ」

「さっきから健さんってば、“ああ”しか言っていないわよ?」

「……ああ」


 やっぱり“ああ”しか言っていない健に、思わずヒヨリは噴きだした。

 バツが悪くなったのだろう。健は少しだけ口を尖らせて頭を掻いた。


「女は化粧や服で変わるっていうけど、ここまで変わると詐欺だよね」

「……健せんせ、それはかなり私のことをこけにしていませんか? 日ごろの私が悪すぎみたいに聞こえるんですが」


 眉間に皺を寄せ、腕を組むヒヨリに健は豪快に笑った。







< 97 / 203 >

この作品をシェア

pagetop