風紀委員長の取扱い説明書



───よって、生徒手帳に記載されている全49条の校則を明日までに暗記してこい。


そう言った時の新委員の絶望的な表情を思い返し、麗は溜め息をついた。


この学園の生徒は皆自分を厳しいと罵るが、自分が行っている事は全て前委員長の受け売りだ。


校則の暗記も、前委員長が自分にやらせた事である。


何か、間違ってしまっただろうか。


無意識に机の上にある写真立てに目をやり、内心溜め息をつく。


2年前の秋の文化祭で前風紀委員長と一緒に撮った写真が、輝いて見える。


本当に、鬼のように厳しい人だった。


だがそれでも不器用に優しく、時折朗らかな笑みを浮かべてくれた。


彼は今、どうしているだろうか。


地方の国立大に行ってしまった前風紀委員長を思い、麗は写真から目を逸らした。

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