冬が、きた。
「ううっ、さむ………」
買い物に行く準備をして、玄関から外に出ると、冷たい空気がちくちくと肌を刺した。
マフラーと耳当てと手袋にマスクという完全防備でも冷気は確実に忍び込んで来る。
自然と早歩きになって、そそくさとアパートのエレベーターに乗り込む。
………今日の晩ご飯は、何にしようかな。
今日は慎くんの帰る時間もだいたい分かってるし、お鍋でも作って一緒に食べようかな。
うん、決定。
アパートから出て、駐輪場に向かう。
すると、私は慎くんのバイクが無いことに気づいた。
………あれ?
なんでだろう。
大学に行く時には、いつも駅まで歩いて、電車に乗るはずなのに。
バイクで大学に行ったのかなあ。………珍しい、というか、今までそんなこと無かったのに。
一体全体、彼は何の気まぐれを起こしたのか。
私は首をひねりながら、スーパーまで自転車を走らせた。