冬が、きた。





「おはよー、雪音」


「おはよう」


大学の校門のところで、サークルの友達とかち合った。


「寒いねー。雪音はいつも通り完全防備だけど」


私はマスクを外しながら答える。


「フル装備でも、十分寒いよ」


敷地内を体育館に向かって歩いていると、友達が思い出したようにあっ、と声を上げた。


「どしたの」


「私、昨日の朝、雪音の彼氏見たよ」


「えっ、慎くんを?」


「うん、バイクに乗ってた」


「え………」


私は固まった。


…………どういうこと、それ。


『えっ?あ、それは………その、友達に、貸してて……』


慎くん………嘘ついてた?


しかも、昨日は朝から部活だったはず。


頭がこんがらがる。


……慎くんは、何を隠してるの?


「雪音の彼氏って、かっこいいよねー」


「うん………」


その後は、友達とのお喋りもバスケも全部が上の空で、結局サークルの皆には心配をかけてしまった。




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