冬が、きた。





次の日の朝、私は玄関の扉が閉まる音で目を覚ました。


「………………」


またやってしまった。


目覚ましをかけようと思っていたのに、すっかり忘れていた。


机の上には、いつもの置き手紙。


おはよう。
行ってきます。
いつもの時間に帰るね。


布団からもそもそと出る。


………元気、出さなきゃ。


今日はサークルがある日だから。


サークルの皆にまで、心配かけちゃいけない。


………顔、大丈夫かなあ。


鏡を見ると、まだちょっと疲れているような気がする。


でもまあ、誤魔化せる程度かな。


私は気合いを入れて、布団から立ち上がった。





「…………あれっ?また?」


私は思わず、駐輪場の前で声を上げてしまった。


…………また、慎くんのバイクが無い。


貸してる……んだよね。また。


傷とかついちゃった時はその友達、直してくれるのかなあ。


慎くんのバイクをちょっぴり心配しながら、私は駅に向かって歩き出した。




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