冬が、きた。





コンサート当日。


私は迷いに迷って結局、ブラウスにカーディガン、膝丈のスカートという当たり障りのない格好をして、Pコートを羽織った。


タイツを履いた足をパンプスに滑り込ませる。


………行くぞ、私。


ドアを開けて、外に出る。


今日はふんわりとストールを巻いただけで、いつものマスクも無ければ、手袋も無い。


でも、緊張していて、あまり寒さを感じなかった。


駅に向かって歩きだす。


4回生は夏のコンクールで引退するから、3回生の慎くんにとっては、最後のコンサート。


………しっかり、見なくちゃ。


会場につくと、開場時間前から、お客さんが入り口の前に並び始めていた。


急いでその最後尾に並ぶ。


私の後ろにも、どんどん人が並んで行った。


寒さをこらえながら、開場時間をじっと待つ。


「今年はどんな演出なんだろうね」


「サンタさんいるかなあ」


………楽しそうに話す人々の中、私は一人、固い顔をして、じっとうつむいていた。




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