冬が、きた。





「……慎くんの、せいじゃない………。思ってること、ちゃんと言わないで、1人で悩んでた私が悪かったの……」


「…………じゃあ、今、思ってること、教えて」


思わず慎くんの顔を見上げる。


慎くんは微笑んで私の顔を見下ろす。


鼻が触れてしまいそうな距離。


………慎くんから離れたのは、私なのに。


距離を取りたいって言ったのは、私なのに。


……………今は、この距離が、愛しい。


「……慎くんと、一緒にいたい」


そう言うと、慎くんに、ぎゅうっと抱き締められた。


…………こんなふうに、苦しくなるほど抱き締められるのは、初めてかもしれない。


そっと、慎くんの背に、手を伸ばそうとした瞬間。


「じゃあ、とりあえず全員、自分の楽器をケースにしまう!それが終わったらステージの片付けと楽器の搬出を同時進行で!」


「「「はい!」」」


部員の人達が、ロビーコールを終えて、ぞろぞろとホールの中に入ってきた。


「………!?」


えええ!う、うそっ!
どどどど、どうしよう!!


あわあわとパニック状態になっていると、慎くんは大きなため息をついて私から腕を外し、私の手を取って立ち上がった。




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