玲瓏
聞き覚えのある声に体が固まる。

振り返ればそこには予想通り。

「え、衿哉さん…。」

「こらっ、さん付け禁止って言ったでしょ。」

「痛っ。」

軽いデコピンをされる。

隣の瑞姫を見ると…唖然としてる…。

「縷依…あんたにこんな知り合いいたっけ…?」

「あっ、いや、あの…これは…。」

しどろもどろするわたしを気にせず、衿哉は相変わらずノリノリで。

「はじめましてー。縷依ちゃんの彼氏の衿哉です。」

ぺこりと頭を下げた彼の言葉にわたしも瑞姫も耳を疑う。

「はいっ?!」

ほぼ二人同時にそう言うと、衿哉は吹き出す。

でも、否定はせず。

「ちょっと縷依ちゃん借りるねー。」

その後わたしは衿哉になかば強制連行という形でつれていかれ…。

「今日は悠もいるよ。やっとみんな揃ったね。」

どうしてこの人はこんなにウキウキしているんだろうか…、と言う視線で衿哉をみる。

わたしたち4人は、リビングに集まっていた。

二人がけソファに、わたしと衿哉。
一人がけに悠さん。
白夜さんは壁によりかかっている。

「傷は、大丈夫か?」

「あ、はい…じゃなくて、うん。」

にっこりと笑えば、白夜は笑い返してくれる。

昨日の帰り道、衿哉からきいたけど…。

「白夜は一見冷たく見えるけど、実はシャイなだけ。
本当はお兄さんみたいな優しいやつなんだ。」

確かにそうかも。

昨日とは全然違う。

昨日とは違うことがもう一つ。

フードの人がいること。

悠、という名前らしいけど…。

さっきから一言もしゃべらないし、フードもかぶったまま。

「悠、なんかしゃべんなよ。
ねぇってば…。
そんなに無視するならフードとるからね。」

衿哉がフードに手を延ばしたそのとき…。

「触るな。」

衿哉の手をガッシリと掴み、フードの奥からは睨むような目だけが見える。

「俺は人間が憎い。」

それだけ言い残し、出て行ってしまう。

ガチャン。

ドアがしまる音だけが部屋に響く。
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