一人遊び転じて、君を抱く
「自傷は、気持ち良くなんかない」
「嘘は良くないな」
「……」
ああ、やはりこいつは嫌いだと思う。
そう思う私とて、こいつは見透かしているのか、「傷つくな」とまったく意に介さない風で言う。
「自慰は言わずもがな、性的快感であるが。自傷は、精神的苦痛を緩和させる効力がある。最初の“一本”は、衝動的もしくは周りへの抗議としても用いられるだろうが、常習化してしまえば、もはや『気持ち良くなるから、する』と差異はあるまい。
痛みは痛いであるが、その後に待ち受ける展開――ぱっくりと割れた傷口、滲む血液、それらを見て興奮しながらも心が落ち着くことが、もはや病み付きではないのかね?
ああ、いや、もっと端的な理由があったか」