一人遊び転じて、君を抱く


ナイフを投げつけたが、奴に当たる前に消えた。


それ以上言うなと睨んでも、奴の弓をしなったような笑みはより深まるばかり。


「早く現実から、逃げ出したい」


見透かされた想いを一字一句そのままに口にする奴こそが、消えろと思えど、夢の中からは去ってくれない。


「去らないよ。君が消えなければ、私も消えない。現実だろうが夢だろうが、私は君とお話がしたいからね」


「……」


「喋りたくもない、か。ならば勝手に喋ろう。――現実からの逃避。我が内(夢)に留まることを望むのならば、やはりそこは快楽(至福)で満ちてなければならない。

起きていれば否応なしに現実と向き合うだろうが、内に没頭する時があるなら話は別。現実は、君をおいてけぼりにしても進むからね。

自慰、自傷。これらを実行したあと、時計の針は意もせぬ場所にはないかな?」


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