あすてりずむ
だいすきでした

 正直出逢いなんて覚えてない。気付いた時から一緒にいた。わたしは“かっち”と幼馴染として育った。母さんと彼の母さんも幼馴染だった。だから知らないうちに近くにいた。知らないうちにたくさん知ってた。知らないうちにたくさん知っててくれた。それがいけなかったのかなって、今なら思う。

 保育園も、小学校も、中学校も、部活も、高校も一緒だった。

 一緒に虫とったり、ゲームで真剣に対戦したり、喧嘩もしたし、真面目な相談悩み全部打ち明けて、土砂降りの雨の中笑いながら走ったり、大きな虹の根元見つけて大はしゃぎしたり、真冬に公園に寝転んで冬の知ってる限りの星座言い当ててみたり・・・。

 かっちは小学校の時から女の子には大人気だった。かっち自体女の子のような華奢な体型で、顔も可愛かった。色んな女の子がわたしに「ねぇ“ほの”!かっち好きな人いるの?」と聞いてきた。その度にわたしは「ほのはわかんないなぁ(笑)」なんて返答した。そんな風に聞けることが羨ましいとも思って聞いた。だってわたしもかっちがすきだったから。

 中学校に入ったらますますかっちは人気になった。部活では試合の度に女の子が取り囲んで応援していた。大会でもギャラリーは女の子で埋まった。わたしは無駄に意地を張ってあえてその中には入らなかった。すきって感情すらその維持で隠し続けた。もう見えないように。

 中学2年生、親友の“かのちゃん”から手紙をもらった。「一人で読んでね」と表に書かれた手紙を帰宅してから開封した。

 「わたし、かっちゃんとお付き合いすることになりました。」
 
 心がひやっとした。とても高い場所から、地面を覗き込んだ感じ。足元、心、全てがひやっとする、あの感じ。

 「おめでとう(^O^)!かのと付き合えるかっちは本当幸せ者だぁ!」

 なーんていう返事のお手紙を書いた。でも嘘じゃない。わたしはかっちもかのも大好きだった。二人共本当にいい人で、この二人なら幸せになれるって本当に思ってた。この二人が幸せになれるならもう、わたしはこれから先隠し通すしかないと思った。
 
 「もう言っちゃいけない。思ってはいけない。」

 いつからか、それが合言葉。駄目だよ。

 「あぁ、そうか好きになるってこういう事なんだね」
 こんな歌詞の歌があったね。本当にそうだった。

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