あすてりずむ
例えば

 高校に入った。かっちとかのはあれから一年半くらいで別れてしまった。わたしはすごく悲しかった。二人にはまだお互いへの気持ちは残っていた。

 かっちはすごく女の子が苦手だった。本人曰く「何を話していいかわからない」らしい。そんなかっちはわたしにだけはべらんぼうに喋る。でもそれは多分男友達と大して変わらない態度。それでも「幼馴染」と言う「繋がり」だけで、わたしは良かった。それだけで良かった。

 そう言うわたしも男の人が苦手だった。高校入学してすぐに、当時3年生だった部活の先輩に何度も言い寄られた。頻繁に鳴る携帯電話。学校では教室まで来られ、見付かれば遊びに誘われる。部活は引退しても毎日何もせず見学後、「家まで送る」と断っても自転車でついてくる。当時、わたしの父は半年間の単身赴任中で家には母しかいなかった。迷惑かけられないと、わたしはずっと母にも友達にも言えずにいた。そうしてエスカレートしていったある日、夜中にメールが着た。

 「外に出てきて」

 部屋の窓のカーテンから外を覗く。そこには奴が自転車にまたがり携帯電話を弄っていた。もう無理だと思った。男の人なんて。

 そうこう一年の月日が経ち。高校二年の学祭時期、わたしは安易な気持ちである男子と付き合ってしまった。彼は一年留年してわたしたちと同じ学年になった、実際は1つ年上。わたしがこの人と付き合った数日後、かのとかっちは寄りを戻した。わたしは3年まえと同じように祝福した。心が、ひやっとした。

 わたしはこの年の秋に彼と別れた。原因は彼の過剰な束縛。何をするにも一緒を共有され、わたしは次第に笑わなくなったそうだ(あとから友達に聞いた)。正直この時のことは今じゃあまり覚えていない。無意識のうちに記憶から削除されたと思われる(笑)

 ただ心も体もボロボロになっていたことだけは、確かに覚えている。貧血になり何度も倒れ、病院で点滴を打った。ご飯も美味しくなかった。何をしていても「楽しい」なんて感じなかった。ただただ、辛い。彼が好きだったのはわたしではなく、「わたしをすきでいる自分」だったのだ。やっぱり男の人なんてみんなろくなもんじゃない。安易な思いで付き合ってしまった自分を責めた。

 彼と別れたあと、友達のおかげでわたしは少しずつ元気になっていった。ご飯も美味しいと感じられ、貧血もどんどん良くなった。みんなと食べるお昼休みのお弁当がすごく美味しかったことを今でも覚えてる。本当にみんながいてくれて良かったと、心の底から思った。

 かのがわたしに言ってくれた、「正直あの男なんてどうでもいい。ほのが幸せならそれで良い。」これを聞いたときは号泣してしまった。もう一人の親友、“さおり”もずっと一緒にいてくれた。幸せだった。

 かっちはただ笑って「良かった」って言ってくれた。

 ねぇ、かっち。例えば・・・例えばだよ?
 わたしがこの思い打ち明けていたら・・・なんてね。
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