あすてりずむ

 高校二年の冬。わたしは初めてかっち以外の人をすきになった。

 そうしてその人と両想いだと言う事がお互い知り、付き合うことになった。その彼が今現在の彼、“さっと”。さっとは凄く温厚で優しい人だった。珍しくわたしがかっち以外の男の人と手を繋げた。たくさん話せた。笑顔になれた。「さっとになら安心してほののこと任せられる。」かっちもそう言ってくれた。

 わたしの幸せ最前線の時、かっちとかのは別れてしまった。原因は「かっちの積極性の無さ。」付き合ってても付き合ってると感じられないこの関係が嫌になったと、かのは言っていた。わたしの心は少し揺らいだ。

 かっちとは相変わらずの関係だった。二人で遊んだりした。いつものように口喧嘩しながらぷよぷよで対戦。そのあとは公園で虫を捕まえて・・・。

 その日は突然の夕立だった。二人共ずぶ濡れで笑いながら東屋まで走った。前も見えないほどの土砂降り。「しばらく出らんないね。」なんて話した。いつも通りの他愛のない会話。唐突に始まる口喧嘩。しばらくして雨はやんだ。

 東屋から出てみると、空に大きな虹がかかっていた。

 「どっわー!でっかい虹!」

 大はしゃぎするわたしを見てかっちは笑った。そうして突然「あっ!」と言ったかと思うと、走り出す。「そこにいて!」と叫ぶかっちが行った先は、大きくかかったあの虹の根元だった。かっちは笑顔でわたしに手を振る。手を振り返すわたしもきっと、笑っているはず。切なくなんかないよ。

 かっちとは部活帰りもよく一緒に帰った。かっちは星について詳しかった。わたしたちの住んでいるところは凄く田舎だったから、冬になると凄く星が綺麗に見える。そして高校の目の前はすぐ公園になっていて、生徒たちはその公園を通って帰ることになる。公園を抜けた先には大きな駐車場があって、夕方にはよく親子がキャッチボールやサッカーの練習などしていた。

 その日は凄く空気が澄んでいて、星を見るには絶好の天候だった。わたしとかっちは駐車場に寝転んだ。2月にしては暖かい日だった。お互い知ってる限りの星座を言い当てて笑った。「あれが冬の大三角。」かっちが指差した方向には大きな冬の大三角がみえた。かっちは隣で色々説明してくれていたけど、ちっとも頭に入ってこなかった。それ以上に、今この時が幸せだった。かっちといられる瞬間が、何よりも幸せだった。でも、それは飲み込まなくてはならない感情。

 「わたしがすきなのは、さっとだよ。」

 そう言い聞かせて、かっちの肩にゴンッとおでこをぶつけた。コンクリートにすっかり体温を奪われた体は、お互いに冷え切っていた。かっちはそんなわたしの頭をスパーンと叩いた。

 ばか




 
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