言いなりデイズ


「消毒するから、手出して。」

「お前がやんの?」

「他に誰がいるの?」

「あ、いや。じゃあ、頼む。」


なんだか不思議な事を言いながら、愁は手を出した。


大きな手だな。


あたしのと比べたら、随分大きかった。


「やっぱり切ったんだね。」

「切ってねぇよ。」


愁は頑固だな。


なんだか、ちょっとだけ愁の事がわかって嬉しい。


とか思ったり。


指先の傷はちょっと深くて、血が止まりにくかった。


あたしはティッシュで傷口を押さえた。


「イテッ…。」

「あ、ごめん。ちょっと強かったかな…」


あたしは少しだけ押さえる力を弱めた。





< 64 / 65 >

この作品をシェア

pagetop