FlowerRose
「へ?」
「怒ってる顔も、泣いてる顔も可愛いけど、やっぱり英子は笑って方が一番可愛いから」
ドキン
修人が居るくせに、あたしの心臓は素直に跳ねた
…駄目なのに…
好きになっちゃ駄目なのに…
もう、無理だ…
あたしはまだカイが好きだ
頬が熱くなっているのが分かる
「バカ…彼氏がいるのにそんな顔すんな」
「あ…」
ズキン
カイの何気ない一言に、あたしの心臓は過敏に反応する
「だーかーらー、英子は笑ってろ!分かった?」
―そうなんだね?
カイはあたしの事なんてどうでもいいんだね?
好きじゃないんだね?
―でも
―それでも、カイがそう言うのなら―
「…うん!」
あたしは精一杯の笑顔を作った
「うん…やっぱりその方が可愛い」
冗談だと分かっているのに、やっぱり嬉しかった
「も、もお!からかわないでよ!」
照れ隠しでそう言った
「あはは、からかってないって!ほら、彼氏のトコ行けよ!」
あたしは少し複雑な気持ちだったが、カイに背中を押されて、気持ちを切り替えた
「…じゃあ、バイバイ!」
「バイバイ!」
あたしとカイは、笑顔でその場を去った
―バイバイ―
まさか、この言葉が最後にカイと交わす言葉になるなんて、この時のあたしには思ってもいなかった
キキィーーーッ
どこか遠くで、車のブレーキ音が聞こえたけど、あたしは振り向かずに前を歩いた
いや、多分、もう分かっていたのかもしれない―
信じたくなくて、振り向かなかったのかもしれない―
あまりに残酷すぎる真実に―