お腹が空きました。

なるほど、“壮介さん”がその名前をつけたのか。

センスやら見た目やら、何から何までラブリーだなあの人…などと思いつつ紗耶は笑顔になった。


「私もケーキ大好きだよー。ゆず君店員さんだからやっぱり詳しいね。お客さんに色々説明とかするの?」

ん、と譲原はゆっくり喋り始めた。

始めはただ誘われてバイトを始めた事。
でも最近興味が出て来た事。
それに気付いた壮介さんが色々教えてくれる事。

流石に商品には触れないけど、店が暇な時は閉めた後に作らせてくれるときもある事。

そんな話をしていると、あれだけ遠くに感じていた駅がもう目の前に近付いて来ていた。

紗耶は微笑みながらお礼をいう。

「ありがとうゆず君わざわざ送って貰って。じゃあね。」

手を降り歩き始めた紗耶を譲原が静かに呼び止める。

「紗耶さん。」


「ん?」


今日、始めて微笑みながら譲原は言った。


「泣いてる顔より、笑ってる方が良いね。」


え。


それってどういう…、、


去って行く譲原の後ろ姿を見つめながら、


紗耶はしばらく固まっていたーー…。





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