お腹が空きました。















うーんうーん。


紗耶は唸りながらモールを私服でブラブラ歩く。

いったい何がいいんだろう。


この間の由美とのやり取りで、ふと思いついた杉崎への日頃の御礼。


しかし、いざ選び出すと、これまた迷って途方にくれていた。

ネクタイ?

…なんか父の日みたい。

時計?

いやいや高すぎるし重い。


ライター…は、タバコ吸わない人だからなぁ。


お酒…は飲んでるみたいだけど、銘柄とか詳しくないしなぁ。


紗耶は考えれば考えるほど、痛感していた。

なんとなく良く知っているものだと思いこんでいたが、自分は案外彼の事を知らないのだ。


杉崎さんはスイーツ以外にいったい何が好きで、何が欲しいんだろう。


キッチンに立ち、袖をまくり、ボウルを抱えて泡立て器をリズム良く鳴らす狼さんを思い起こす。


ニヤリと少し楽しそうに微笑む杉崎。


いったい何をあげたら喜ぶのだろう。


どうしたら嬉しそうに笑ってくれるだろう。


散々悩み、ブラブラとモール二周目に突入した紗耶は、それでもこうやって杉崎への贈り物を考える時間はそう悪いもんでもないな、とこっそり微笑んだ。




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