お腹が空きました。





む、


むむ?!



フラフラ漂って、紗耶が最終的にたどり着いた場所は、電化製品のエリア。

ババンと書かれた“注目”の文字に素直にしたがった紗耶は遂に発見した。


“夜でも安心!静かなハンドミキサー”


「これ…。」


いいんじゃない?

いいよねこれ!

ガシッと商品に近寄った紗耶は傍らの値札に「お、…おお。」っと、なりながらも、離れていく事はなかった。

少々お高いがこんなになんだかぴったりと杉崎にハマる商品はないんじゃないだろうか。

うん、やっぱり、これイイ。

デザイン、カーブの形。

見れば見るほど気に入ってしまった紗耶は、可愛いパステルピンクとビビッドなブルーとシックなシルバーで悩んだ末、そのままの勢いでシルバーを購入。プレゼント包装までしてもらった。


サイフの中は寂しくなったけど、気分は沈むどころか、ななめ上向き。

ウキウキしている。


袋を軽く振りながら帰り道をいそいそと歩く紗耶は、満面の笑顔を巻き散らかしていた。

…買っちゃった。

買ってしまったーっ。


「(杉崎さん、喜んでくれるかな?)」


いつも通り、ふんっ、とかいわれそうだけど。


それでもやっぱりプレゼントしたいなぁ。


夜でも気にせず使えるハンドミキサー。

この前音がうるさくて近所迷惑になるの気にしてたもんね。


紗耶は駅まで杉崎の反応を予想しながらご機嫌で帰って行ったのだった…。




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