お腹が空きました。



「ストップ…っ!!それ以上寄らないでくださいっ。」


ひーーー!


我ながらよく杉崎相手に言えた台詞だ。


案の定怖い顔をして杉崎から低いうなり声がする。

しかし、もう、胃袋が耐えられそうにない。

「いったいなんなんだ。」


紗耶はあきらめたように白状した。




「だって杉崎さん、……美味しそうな匂いがするんですもん。」



そうなのだ。


この人時々妙に甘い匂いがする。


しかも今日に限っていつもよりその香りが強いのだ。



「美味し…?」


ぴたりと動きを止めながら杉崎は戸惑った。


「そうです。今日はなんだかあまーいベイクドチーズケーキの香りがします。」


「嘘だろう?」


そういってクンクン自分の袖をかぎ出す狼顔の男に紗耶は目をつむった。


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