お腹が空きました。


杉崎の部屋で会う分には紗耶はもう平気になっていた。

会社では人の目もあるのでお互いにしれっとただの上司と部下を装い、金曜日の夕方、どうでもいい事をしゃべりながらケーキを焼く。

いつか、紗耶は聞いてみた事があった。


『ケーキ屋に今からでもならないんですか?』と。

杉崎は難しい顔をしながら、趣味だからこそいいんだと言っていた。


あのまま無理やり仕事にしていたらたぶん、戻れなかったと。

その時紗耶はどこに戻るのだろうと疑問に思っていたが、今日の話を聞いてなんとなく分かった。




ケーキ作りが好きだった小さなころの杉崎さんに、遠回りを何回も繰り返してやっと戻って来たんだね…。


しかしまぁ、

「もうケーキ作ってるって、何年間家族に黙っているんだろ…。」


くくくくっと紗耶は体を泡立てながら笑う。


杉崎の意地っ張りも相当だ。


体を流して湯船に浸かりながら紗耶は落ち着いた自分に再度問いかけてみた。


杉崎さんって、私のなに?






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