お腹が空きました。
唇に杉崎の人差し指が触れ、甘いベリークリームが口の中に広がった後、まだ指に残ったクリームは杉崎自身の唇へと消えていく。
ゆっくりと自分の指を舐める杉崎は、
チラリと紗耶に大人の視線を送った。
…な
なんか、
ものすごくエ口いんですけどーー‼‼
紗耶はへたり込みそうになりながらも、かろうじて足を踏ん張る。
心の中でギャーギャー騒いでいる紗耶をクツクツ笑いながら杉崎は尋ねた。
「ああ、紗耶。」
「は、はい。」
「持って来たか?“お泊まりセット”」
「はい!バッチリ!」
いつもより大きめのカバンを紗耶が指差す。
型にクリーム生地を流し込みながら、杉崎はウムと頷いて笑った。
この前は急で、次の日に昨日の服を着ていたけれども、今日はちゃんと色々持って来ている。
「リンスに、パジャマに、化粧落としに、下着に、髪留めに、充電器にー…」
「分かった分かった。」
杉崎は冷蔵庫の扉を閉めながら紗耶を止めた。
洗いものをさっと終わらせて、杉崎は腕時計を締める。
「よし。んじゃ行くか。」
「え?」
いつものように部屋でゴロゴロ過ごすのかと思っていたので、紗耶は目を丸くする。
「え、え、どっか行くんですか?」
杉崎は紗耶の手を引きながらニヤリと笑った。
「そうだ。夜のデート。」