お腹が空きました。


「あ、牛野さん。」

「紗耶ちゃんやっほー。」

ニコニコしながら牛野が手を揺らす。

もう片方の手に下げた紙袋をキッチンに置きながら牛野は更にニヤニヤ笑った。

「?」

「やー、なんだろう。杉崎んちがピンクピンクしてる。」

「ん?」

特にピンク色のものはないけど…、と紗耶は首を傾げる。

「紗耶ちゃんがいると華やかだって事だよ。」

そう爽やかに、しかし含んだように微笑んで牛野は手を洗った。

「いやいや…、あ!それ桃ですか⁈」


ふわんと桃独特の甘い誘惑的な香りが紗耶の鼻の粘膜をくすぐる。

うんそうだよ、と言いながら牛野は冷蔵庫を開けた。

「...本当にピンクピンクだな。」

「え?」

「や、杉崎にしては珍しい酒を揃えてるなと思って。」

ごつごつしたイカつい封の開いたお酒に混じって、細長い薄紫色の瓶が冷蔵庫の扉側に並んでいる。

目を丸くする牛野に、紗耶はちょっと困った顔をしてハハハーと愛想よく笑った。

「ん?牛野、桃なんてどうしたんだ。」

後から入っていた杉崎が部屋中に漂う良い香りに不思議そうに尋ねる。

「あぁ、母さんがお客さんからいっぱいもらったらしくて、くれた。ケーキ作るのにでも使ってくれ。なんか桃で出来る奴あるんだろ?」

「熟れてるかそうでないかでなんにするか変わってくるけど、…なんだこれ、良い桃じゃねーか!」






えぇ?!


綺麗に筋肉の付いた腕で、がさごそと紙袋を漁る杉崎を見つめたまま、紗耶は目を見開いてあんぐりと口を開けた。





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