お腹が空きました。
薄暗くて棚ばっかりの部屋の奥に見慣れた広い背中が隠れている。
紗耶はそれだけで少し嬉しくなってしまい、極力静かに、早足で駆け寄った。
…やっぱり杉崎さん、背中カッコいいなぁ。
「…。」
手持ちの資料をペラペラと確認している杉崎の背骨に紗耶はいたずら心でするりと人差し指を滑らせる。
「ぉわっ!」
ビクッと体を飛び上がらせ、杉崎はグルンと体を回転させた。
ブフっと吹き出し紗耶はニヤニヤ笑う。
ぉわっ!だって…っ。
「何小学生みたいな事してんだよ。」
「あははっ、すみませんすみませんっ。
それで、どんな用ですか?」
紗耶はニヤニヤ顔を引っ込めて、にこやかに尋ねた。
ん、と杉崎も不貞腐れた顔を外し、手元の資料をポンポンと叩きながら渋く眉を寄らせる。
「ちょっと堀田がやらかしたらしい。コールセンターから連絡があって、今確認してたんだが、…ちょっと長引きそうだ。」
そう言って杉崎はポケットから何か取り出して紗耶の手のひらに乗せた。