お腹が空きました。
まず、いつもイカつく上げてる髪を下ろしてもらって、ワックスで揉んだらちょっと印象変わるかな?
そんで、伊達眼鏡かけてもらって服装をちょっと柔らかく着崩したり可愛いめの色入れたら変装完了?
わー見たい!
似合うと思うなぁー!
ああいうキツめの華のある顔の人があえてやぼったい眼鏡とかかけてたらちょっとキュンとくるかも。
あ、でも体型の事考えるの忘れてた。
肩広いもんなぁ。
いけるかなぁ。
うーん。
もう無難に帽子とか被ってもらう?
「もう、それか…思い切って杉崎さんにはカツラを…」
「どんな夢だそれは。」
ぱちくりと紗耶は半分以上寝ていた目を開き、声の方を振り返った。
スーツ姿の杉崎が腕をくんで扉の前に立っている。
「杉崎さんっ!おかえりなさい!」
犬のように駆け寄る紗耶に、杉崎はふっ、と笑って、ただいま と節くれだった大きな手で頭を優しく撫でた。
「で?誰がハゲだって?」
「なんの話ですか。」
紗耶は首を捻りながら、ああ、と手を叩く。
「今度杉崎さんとデートしたいなぁと思って!」
「…その提案からどうやってカツラにたどり着いたのか想像出来ねぇ。」
げんなりとそういいながらも頭をポリポリとかき、杉崎は照れたように顔をしかめてスーツを脱いだ。