お腹が空きました。
ぐりぐりと両方のこめかみを揉むと、杉崎は上を向いたまま至福の表情をする。
麻酔を打たれた野獣みたいな顔の杉崎を見て、紗耶はクスクスと笑った。
なんか、可愛い。
「そういえば、ご飯食べましたか?」
「食べる暇なかった。」
そう言って杉崎はクンクンと鼻を鳴らす。
「…なんか作ったのか?」
「はい!食べます食べます?」
キッチンまで紗耶が小走りし、鍋の蓋をぱかっと開ける。
ふわりと柔らかいゆげが上がり、リビングに中華の香りが広がった。
「これなら杉崎さんに負ける気しません!手作り水餃子ーっ!」
ニヤリと挑発的な瞳で杉崎を見上げ、ふふんと紗耶は手のひらを回して湯気を杉崎に送る。
紗耶の変な動きに杉崎は怪訝な顔をしつつも、いい匂いつられ鍋に近付いた。