お腹が空きました。
「…ねぇ、」
由美が小声で紗耶に耳打ちする。
「係長の隣、誰?」
「分かんない。」
そういえば誰だろう。
紗耶は杉崎の頭一個分小さな身長の眼鏡の男性に視線をそそいだ。
「…というわけだ。その間、杉崎の代わりに係長印が必要になったらこちらの野上君に声をかけるように。野上君。」
「はい。」
部長にそう背中を押され、眼鏡のおとなしそうな男性が一歩踏み出してぺこりと頭を下げる。
野上と紹介された男性はニッコリ微笑み、割と通る声で輪になっている社員一人一人をぐるりと見渡しながら喋った。
「広報部から来ました、野上修造です。今回は同期の杉崎の代理を…」
ハキハキと喋る野上に、紗耶はたらりと嫌な汗をかく。
…何故こんな時にわざわざ広報部から杉崎の代わりなんてくるのだろう。
係長のすぐ下にもっと仕事内容を理解している部下の人もいるのに。