お腹が空きました。
由美も不信がっていたらしく、横に視線を泳がすとチラリと目があった。
…嫌な予感がする。
紗耶はスッと息を呑み、また野上に視線を戻して挨拶に集中し直す。
しかし、無情にも冗談も入れ込んだ軽快な挨拶の最後に野上は決定的な言葉を告げた。
「…と、いうことで、優秀な杉崎の後釜で内心ドキドキしていますが、これからどうぞ宜しくお願いします。」
「…!」
ざわっとオフィスが揺れる。
え…、
…本当に?
なんで?
紗耶は目を見開いてまたずいっと出て来た部長に向き直った。
「広報部が今の時期ちょうど暇でなぁ。正式な時期からちょっと早いが、だいたいの引き継ぎも済んでるし、今日は練習がてら入ってもらう事にした。もちろん、少しややこしいのが来たら中間(ナカマ)も入れて三人で相談しながら進めるように。中間、よろしく頼むぞ。」
「はい。分かりました。」
さほど驚きもせず、杉崎の次に頼りになる先輩が頭を下げる。
「ぶはっ…なまはげがいなくなるのか…。」
ざわざわした雰囲気の中で、ぼそっと斜め後ろから辻の声が聞こえた。