お腹が空きました。
カタカタカタ…
まっすぐパソコンに向き合って、入力と確認作業をする紗耶の隣で由美がぽそりとこぼす。
「…中間さんも複雑だろうね。もし杉崎さんがポスト移動したら次は中間さんだと思ってたのに。」
「…そうだね。」
「野上さんもわざわざ広報からってなんか事情が…。
…紗耶、そんな落ち込まないでよ…、
…っていう方が無理か。」
半分表情を失った紗耶を見て、由美は杉崎から事前に知らされてなかった事を悟った。
「…彼女ぐらいには知らせとけって話よね。」
小声で、そう大げさにため息をつく由美に、紗耶はくすりと笑う。
「カタブツだからってプライベートにまで、ねえ?ほんと、そういうのは仕事と切り離したら良いのに。杉崎さんも何やってんだか。」
「由美ちゃん。」
「ん?」
「ありがと。」
由美は目を丸くして紗耶を見つめた。
「…変な子。」
お互いにクスクス笑い、またパソコンに向き直ってキーを打つ。
もやもやと不満に思っていた事全部由美が変わりに言ってくれたおかげで、紗耶の気持ちはあっけないぐらい晴れていた。
「まぁ、帰ったら一言文句言ってやったらいいわ。…私はあんな怖そうな人にそんな事とてもじゃないけど出来ないけどね。」
「あははっ…
おっと。」
腕を抱えて大げさにガタガタと体を震わす由美に、紗耶は笑ってしまった口元を慌てて抑え、キョロキョロと周りを確認する。
…そうだな。
うん、そうしよう、と頷き、紗耶は気合いを入れ直して仕事にのぞんだ。