お腹が空きました。
え、と紗耶は息を飲んだ。

それってどういう…

紗耶は一瞬で頭の中に色んな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、不安気に杉崎を見る。

「え、えっ」

ちょっと、鬱陶しくなったとか?

別れたくなってきたとか?


…他に好きな人が、出来たとか?


半泣きの紗耶に間髪入れずに杉崎は答えた。

「違うって。そうじゃねえ。」

キッパリと言い放ち、杉崎は少し黙る。

頭の上にはてなを乗せながら、紗耶はハの字にさせた眉をそのままに首を傾げた。


「……紗耶。」

「はい。」

はぁ、と杉崎は息を吸い直す。


「俺が仕事場で叱ったら、怖いか?」


紗耶はキョトンと目を丸くした。


「え、…叱ってる時の杉崎さんですか?
そりゃ怖いですよ。あの低い声で的確な指摘といつもの厳しい最後のひと言。
目が更に怖いです。ぴしゃんっ!って短く終わるのが救いだって同期の皆も言ってました。いや、ほんとこわいです。」

「…俺はお前のその遠慮のなさがこぇえよ。」

杉崎は近くの屋上駐車場に車を止め、ため息をつく。

「はぁ、で、お前、半泣きになるだろ。」

「え、いつも泣いてませんよ。」

「いや、半泣き。…俺はそれが堪えるんだよ。」


ぐたりとハンドルに軽くもたれ、杉崎は紗耶と目を合わさず向こうを向いた。

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