お腹が空きました。
「他の奴の凹んでる顔もそれなりにきついけどな、…お前のは、もう、結構耐えれんぐらい厳しいもんがある。だからだな…。」
向こうを向いたままの杉崎の襟足に紗耶はただ静かに視線を送る。
……。
「…あーあ、寂しいのは私だけってことですね。」
「紗っ」
「っていうのは冗談で。」
紗耶は口元を緩め、柔らかく笑った。
「杉崎さんは凹んでる人以上に凹んでるってことですね。あはは、杉崎さんって本当に…」
本当に、なんでこんなに不器用で繊細なんだろう。
ケーキはあんなに器用に美しく作れるのに。
紗耶は、はぁと肩の力を抜き、なははと諦めたように、…慈しむように杉崎を見つめる。
本当に…。
杉崎さんって不器用なことと、器用にこなせる事の差が…
「激しいですよねー。」
「…?」
ん?と眉を固める杉崎に、紗耶は感極まったように体ごと横を向いた。
「もっと、私には遠慮しないでそういう(不器用な)一面、見せて下さいね。」
「…あぁ?」
口を開け、理解できていないのか怪訝そうな顔をする杉崎に、紗耶はもう一度わかりやすいように説明する。
「え?あ、だから、仕事が昼の顔とすると、夜の顔?と、いうか、杉崎さんの内側というか、内々にため込んでるものというか、」
「アブノーマルな話か?」
「え?」
まったく噛み合わない会話に、紗耶もやっとなにか行き違いがあると気が付いた。