お腹が空きました。
アブ?
スッと狼さんの瞳にあやしい光がさし、紗耶の危険信号をあおる。
カチッ、シュルッっとシートベルトが外れる音がして、一歩杉崎との距離が縮まった。
「ほぉ。別に俺はいつもので満足してたんだが、紗耶が興味あるなら…、試してみるか?」
「え?え?なんの話で…」
あれ。
これは、
なんかやばい方向だ。
紗耶はあわてて窓際に一歩下がるが、時すでに遅し。
ぎしっと揺れるシートに、杉崎との激しい夜を思い出して顔を赤くする。
「手始めに、ここで、とかな。」
「だからなんの話、って、わっ、ちょっ!なんっ杉崎さんの心の悩みの話をしてたのに何故にこうなるのですかっ!」
「ん?夜の生活の悩みじゃなくてか?」
「ちょ!タイム!杉崎さんタイム!!」
舌舐めずりをするのはスイッチの入った証拠。
がたんっと冷や汗をかきながら紗耶はそのテラリと光る形の良い唇に自然と目が行ってしまった。
にやりと歪む口元に心臓が早やまる。
顔の隣にとんっと大きな手のひらがつかれ、ぐっと近づく距離に紗耶は息を飲んだ。