お腹が空きました。


ご、ご勘弁をーっっ!

ほぼ人通りのない屋上駐車場だからといって、こんな、ガラス越しに空が見えるような所で。


紗耶は顔を赤や青に慌ただしく点滅させながら、杉崎の説得にあたる。

「ダメです杉崎さん…っ!こんなところ、会社の人に見つかったら…っ」


「…まぁ、会社の奴ら以外でもヤバいわな。…まぁいいか。」

「余計ダメですよ!」

分かってるんじゃないですか!と紗耶はあわあわと膝を立てて体を小さくし、杉崎のゆっくりとしたキスを手でガードした。

クスクスと実に楽しそうに杉崎は笑い、そんな紗耶の右手を指をなぞりながらゆっくりと剥がす。

う、っ、

たったそれだけの仕草なのに、紗耶の体温はドサっと上がった。


「す…杉崎さ…」

「んー?」





ピピピピピ…




カサッとあっという間に詰められていた距離が空き、紗耶は熱い顔を上げる。

「はい、もしもし。…ああ、それでしたら…」


カチリと。入れ替わったスイッチの音が聞こえるくらいの’’仕事モード”な彼を、ぽかんと口を開けながら眺め。

紗耶は半分ほっとし、半分肩透かしを食らってズルっと脱力しながら上を向いた。


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